日本酒は酒税法において、原料や製造方法の違いなどにより、「特定名称」として以下の8種類に分類されます。
一定の条件を満たす上記「特定名称」は、【普通酒(一般酒)】と区別して表示することができます。
「特定名称」は大きく【純米酒】と【本醸造酒】とに分かれます。
【純米酒】か【本醸造酒】かは、アルコールが添加されているか・いないかの違いです。
※アルコール添加といっても添加するのは純粋なアルコールなので、食品添加物ではありません。
【純米酒】は精米歩合と香味等の要件により(1)純米大吟醸酒(2)純米吟醸酒(3)特別純米酒(4)純米酒に分類され、
【本醸造酒】も同様に、精米歩合と香味等の要件により(5)大吟醸酒(6)吟醸酒(7)特別本醸造酒(8)本醸造酒に分類されます。
使用原料 | 精米歩合 | 香味等の要件 | 特定名称 | |
---|---|---|---|---|
米・米麹 | 50%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好 | 純米大吟醸酒 | 純米酒 |
60%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 | 純米吟醸酒 | ||
60%以下 又は特別な製造方法 (要説明表示) |
香味、色沢が特に良好 | 特別純米酒 | ||
― | 香味、色沢が良好 | 香味、色沢が良好 | ||
米・米麹 醸造アルコール |
50%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好 | 大吟醸酒 | 本醸造酒 |
60%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 | 吟醸酒 | ||
60%以下 又は特別な製造方法 (要説明表示) |
香味、色沢が特に良好 | 特別本醸造酒 | ||
70%以下 | 香味、色沢が良好 | 本醸造酒 |
精米歩合とは、白米のその玄米に対する重量の割合をいいます。
精米歩合60%というときには、玄米の表層部を40%削り取ることをいいます。米の胚芽や表層部には、たんぱく質、脂肪、灰分、
ビタミンなどが多く含まれ、これらの成分は、清酒の製造に必要な成分ですが、多過ぎると清酒の香りや味を悪くしますので、米を
清酒の原料として使うときは、精米によってこれらの成分を少なくした白米を使います。
ちなみに、一般家庭で食べている米は、精米歩合92%程度の白米(玄米の表層部を8%程度削り取ります。)ですが、清酒の原料とする米は、
精米歩合75%以下の白米が多く用いられています。
特に、特定名称の清酒に使用する白米は、農産物検査法に基づく農産物規格規程によって、3等以上に格付けされた玄米又は
これに相当する玄米を精米したものに限られています。
米麹とは、白米にこうじ菌を繁殖させたもので、白米のでんぷんを糖化させることができるもののことです。
また、米麹の製造に使用する白米をこうじ米と言います。
なお、特定名称の清酒は、こうじ米の使用割合(白米の重量に対するこうじ米の重量の割合をいいます。)が、15%以上のものに限られています。
醸造アルコールとは、でんぷん質物や含糖質物を原料として発酵させて蒸留したアルコールをいいます。
もろみにアルコールを適量添加すると、香りが高く、「スッキリした味(辛口)」となります。
さらに、アルコールの添加には、清酒の香味を劣化させる乳酸菌(火落菌)の増殖を防止するという効果もあります。
吟醸酒や本醸造酒に使用できる醸造アルコールの重量(アルコール分95度換算の重量によります。)は、白米の重量の10%以下に制限されています。
吟醸造りとは、吟味して醸造することをいい、伝統的に、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、
特有な芳香(吟香)を有するように醸造することをいいます。
吟醸酒は、吟醸造り専用の優良酵母、原料米の処理、発酵の管理からびん詰・出荷に至るまでの高度に完成された吟醸造り技術の開発普及により商品化が可能となったものです。
参考・一部抜粋:「平成28年3月 国税庁課税部酒税課酒のしおり 清酒の製法品質表示基準」
日本酒には絞り方や貯蔵方法により、そのほかにも様々な種類があります。
いくつか参考までに以下に掲載します。
日本酒を絞る際に最初に出てくる薄く濁った部分を詰めたもの。アルコール度数は低めで、雑味も含めて力強いワイルドな味、フレッシュで華やかな香りが特徴。
醪(もろみ)を入れた酒袋を吊るしたり、槽(ふね)という箱に入れたりして、自然の重みで滴るお酒を一滴ずつ集めたお酒。
雑味が少なく綺麗な味わいに仕上がる。一回の仕込みで取れる量はわずかなので、高価。
日本酒造りの工程でよく行われる「加水(水を加えてアルコール度数を調整する)」を行わず、絞ったお酒をそのまま瓶詰めしたもの。
原酒のアルコール度数は20%前後あり、しっかりした味わいで強さを感じます。それゆえロックやシャーベット状に凍らせて飲む飲み方がお勧め。
日本酒を絞った後の少し黄色がかった色を無色透明にしたり、細かいおりや雑味といった余分なものを炭などを使って取り除く「濾過(ろか)」の作業を行わず、瓶詰めしたもの。
濾過による香りや味わいの調整をしていないので味に複雑性があり、絞ったそのままのずっしりとした味わいを楽しめる。
山卸(やまおろし)という作業工程を省いたもの。山卸とは、アルコール発酵を促す酒母づくりの工程の一つで、蒸した米をすり潰す作業のこと。
これにより米を溶かす時間を早め、日本酒造りに必要な乳酸を得るための乳酸菌を一から育てる。深い旨み、骨太で切れのある味わいになる。
腐敗防止などを目的として通常2回行う火入れ(加熱処理)を一切行っていない日本酒。とても美味しいが味が変わり易く、保存が難しい。
生酒をタンクに冷蔵貯蔵しておいて、出荷前の一度だけ火入れ(加熱処理)を行う日本酒。生酒の風味を残しながらも特有の風味がある。
タンク貯蔵前の一度だけ火入れ(加熱処理)を行う日本酒。
春先に一度だけ火入れ(加熱処理)し、秋まで熟成してから出荷される生詰め酒。